母親失格
保育園に行きたくない。
って初めて言うから、行かなくて良いよって言って1週間を一緒に過ごしたね。
月曜日に
公園に行って、違う保育園の子たちが遊んでるのに遭遇して、君はそれを少し羨ましそうに遠くから眺めてたね。
気休めになればって買ったアイスが、暑さでどんどん解けた。浅はかな気持ちが虚しくなった。
胸が張り裂けそうになった。すぐ逃げ出したかった。遠くから、一人で寂しそうにしてる最中にたまらなくなって涙が出た。
誰かこの子を、私を助けて欲しい、と思った。
自分が学校に行かなくなった日のことも思い出した。普通じゃない自分が社会や親から厄介者とされ、毎日自責の念に苛まれる日と重なった。
あの日は逃げ出したけど、今は逃げ出せなかった。もう人生の主役は私じゃないから、私はそれをただただベンチで見て堪えるだけだった。
そんな顔にしたのは、私のせいだと思った。
苦しかった。
今もなお苦しい。
遠くの公園に出かけたり、動物園に連れ出したり、区民プールに行ったり。
二人でいろんな話をした。
金曜日になった。
その日は二人で買った、コンビニのおにぎりを食べた。偏食の君が、おいしいと思えた新しい味のやつを探して買って食べた。
二人で過ごす間、いろんなことを教えてくれた。
ビート版で泳げるようになったね。
文字を書けるようになって、足し算もできるようになったね。
新しい食べ物も食べられるようになったね。
朝から私の後ろをついてきて、いろんなお手伝いをしてくれたね。
たった1週間だよ。
1週間、保育園に行かなかっただけ。
夏休みみたいなものを二人で過ごしただけ。
それなのに、なんでこんなに私は君に申し訳ないんだろう。悲しくなるんだろう。寂しくなるんだろう。幼稚園帰りの子供を見て、学校帰りの子供を見て、どうしてこんなに死にたくなるんだろう。
自分の過去と重なるからだよ。
私が君の居場所を奪ったんじゃないか?
私が君の不安を作ったんじゃないか?
私が君の人生をめちゃくちゃにしてるんだ。
6日間、ずっとそう思った。
私が君を私のように育ててしまっているんじゃないか?
私は毎日その強迫観念に責められている。
時折、頭がおかしくなりそうになる。
判明しない病名、見えない未来、人付き合いができない情けなさ、仕事のない今日、大声で喧嘩する家庭、わかってもらえない寂しさ、不安、孤独
毎日毎日毎日
君が私のようになったらどうしようって、思ってる。
生き辛さを抱え、一番親しいパートナーにすら理解しがたく、孤独を感じ、未来の見えない環境に閉塞され、死を意識する日々をすごすようになったら
取り返しのつかない、心の病にしてしまったら。
追い詰められている。